肩こりは、ほとんどの方が経験されたことのある症状の1つだと思います。厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、肩こりは女性が訴える自覚症状1位であり、男性でも2位とされています。近年は、パソコンやスマホ・タブレットなどの使用もあってか、肩こりが低年齢化しているようです。肩こりと侮っていると、肩こりが慢性化し日常生活にも支障をきたす場合もございますので、積極的な早期治療がお勧めです。肩こりとおもっていたら、実は椎間板ヘルニア・頚椎症・胸郭出口症候群だったなどということもありますので、症状が重篤な場合は医療機関を受診下さい。

1. 肩こりの原因

肩こりの原因は多くありますが、よく見られる原因としては、長時間の同一体位、ストレスや運動不足による血行不良が多いようです。
長時間の同一体位では、やはりパソコン作業が代表的です。頭と首をやや前に突き出し、肩をすぼめた姿勢が想像できるかと思います。人類の中でも、日本人は頭が大きく筋骨格系がやや小さい人種ですので、5㎏ほどもある頭、体重の10～15％とも呼ばれる首から頭の大きさを安定して支え続けるためには正しい姿勢が重要なのですが、パソコン作業の際の姿勢は、日本人の体格の性質上よくありません。肩を中心に首や肩周囲が緊張状態となり血行不良になるうえ、パソコン作業では肩を動かすことがほぼありません。また、眼精疲労も進みますので、肩こりにとってはさらに悪影響なのです。
ストレスや運動不足による血行不良ですが、抑うつのPageにも書いていますが、過度のストレスは筋肉の過緊張をまねき筋肉疲労が蓄積します。運動しようにもストレス下ではまず困難です。日常の過緊張状態では、筋肉に疲労物質が蓄積し続け、血行不良をまねきます。血行不良下では、疲労物質などの老廃物の排出効率はさらに減少し、肩こりや肩こりに伴う随伴症状は、より一層悪化していきます。

 2.肩こりの原因となる疾患

頸椎椎間板ヘルニア

椎間板と呼ばれる軟骨には背骨をつなぐクッション効果があるのですが、加齢性変化や正しくない姿勢などにより、この軟骨が擦り減り変形した軟骨が神経を圧迫すると、各神経が支配している領域に神経異常を生じます。頸椎の椎間板が障害されると、初期症状として首から肩のこりを突然発症します。この状態を放置すると、頭痛やめまいなどの症状も出現します。筋骨格系は鍛えることが出来ますが、障害された神経を再生することはほぼ困難です。症状が1週間以上続くのであれば、医療機関の受診をお勧めいたします。

頚椎症

頚椎症は、頸椎の椎間板ヘルニアとよく似た疾患です。詳細は簡略しますが、頸椎のCTやMRIで鑑別できます。どちらも頸部の脊椎に病変を生じ、神経が圧迫されることにより発症し、代表的な症状は首の痛みや肩こりです

胸郭出口症候群

 胸郭出口症候群は、なで肩の女性に多く見られる症状で、腕や肩への負担が強い動きで神経や血管が障害されることにより、肩や腕や手にしびれや痛みや冷感を生じます。症状が長期化すると、頭痛や吐き気などの症状も随伴いたします。

3.肩こりのエクササイズ

肩こりでお悩みの方に、お家で出来る簡単セルフエクササイズとして、対症療法ではありますが簡単な体操もあるようですのでご紹介いたします。1度お試ししてみてください。

肩甲骨エクササイズ

まず、肩甲骨を背骨に向かって内側に寄せます。そして、そのあと肩甲骨を背骨から話すように外側に動かします。肩甲骨を水平に回転するように回すことを意識することで、肩甲骨に引っ付いている各筋肉の過緊張状態を解除することにもつながります。

背骨エクササイズ

座面に座った姿勢で両方の腕を胸の高さまで挙上します。背骨を正しく真っすぐに伸ばした姿勢で、さらに前方へ腕を伸ばす動作を5秒ほどかけて数回行います。

4.肩こりとリンパマッサージ

リンパマッサージで改善が見込める肩こりは、おもに筋肉疲労による血行不良を原因とした場合です。筋肉疲労の原因となる正しくない姿勢やストレスなどにより、肩の血行不良を招き、疲労物質が蓄積され、結果として肩こりを引き起こします。リンパマッサージによるリンパ循環の改善により、体の中の老廃物や疲労物質が回収され、症状が改善する方向に働きます。
リンパマッサージは、まず、副交感神経を優位にしますのでリラックス効果があり、筋肉の過緊張状態を改善いたします。そして、リンパ循環を正しくマッサージすることで、筋肉の疲労物質の排出効率が高まり、結果的に血液循環も改善されるため、疲労物質の排出効果はより高まります。さらに、正しい姿勢や日常生活上のアドバイスにより、原因を意識した日常を送ることにより、肩こりの根本的な改善が期待できます。

肩こりは、日常生活上の代表的な自覚症状ではありますが、中には椎間板ヘルニア・頚椎症・胸郭出口症候群などの疾患が影響しているケースもございますので留意が必要です。急性の肩こりにおいては、特にリンパマッサージが即効的であると言えます。ただし、肩こりが慢性化した状態になるにつれ、当然ながら施術効率は低下いたします。ただし、肩こりの原因が同一体位やストレスにあることが疑われれば、リンパマッサージに加え日常生活へのアドバイスにより、さらなる肩こり改善が期待できます。