日常生活と浮腫
日常生活上の浮腫の原因などが長期化し慢性化してしまうと、疾患となって浮腫を生じる可能性がありますので、そうなる前に日常生活上の浮腫の原因についての理解を深めることは大切です。リンパマッサージを行う際、不規則な日常生活を送る方への予防策や浮腫を患った方への対応策がアドバイスできますし、ご自身の健康へも有用です。
浮腫の原疾患として代表的な心不全や腎不全などでは、浮腫に関する安易なアドバイスは避けた方が良いのですが、予防策や対応策として知っておきたい知識でもあります。リンパマッサージ資格に必要な知識として簡単にご説明致します。
日常生活上の浮腫の原因
長時間の立位
浮腫は、全身の血液循環やリンパ循環に障害が発生することで生じるます。仕事をする際、どうしても長時間の立ち仕事を余儀なくされる場合、浮腫にとってはよろしくなく浮腫の原因になりかねません。
理由は、立位では全身の血液循環やリンパ循環が心臓に戻る際に、下になる足先から心臓がある上への移動となり、重力の向きである上から下への負荷とは真逆の移動となるためです。横になっている際も、立位の際と同様に重力の影響を受けるのですが、足先も心臓も同じ高さに位置するため、血液やリンパ循環の心臓への流れは真横への移動となるため、立位の際とは違い負荷が軽くなります。横になって足の下にクッションなどを置き、足先を高い位置に保つことが推奨されているのは、血液やリンパ循環の心臓への流れが、上側になった足先から下側になった心臓への移動となり重力の恩恵を受けるからです。
日常生活でこのような姿勢のお仕事というのは、なかなかお目にかかりませんが、仕事時間から解放され、自宅などでこの姿勢で時間を過ごすことで、疲れたむくんだ足の疲労回復には即効性があります。
長時間の同一体位
長時間の同一体位も浮腫にとってはよろしくなく浮腫の原因になりかねません。
血液循環が心臓に戻る際、前述の重力のお話とは別に筋肉の影響を受けるからです。血液循環が心臓へ戻る際、筋肉ポンプと呼ばれる筋肉の収縮と拡張が血液循環を補助してくれます。
簡単に言うと、動いていれば筋肉ポンプの恩恵が受けられ、動いてないと筋肉ポンプの恩恵が受けれないということになります。やみくもに動くのでは無駄に筋肉に乳酸疲労を生じてしまいますのでよくありません、普通に動く程度で結構です。
ご存知のように、筋肉は意識的に動かすことができますが、無意識下に少し姿勢を変えるだけでも筋肉は収縮し拡張します。しかしながら、長時間の同一体位では、筋肉ポンプが活かされないため、浮腫にとってはよくないのです。つまり、血液循環が心臓へ戻りにくくなるため、長期化し慢性化してしまうと、心臓から最も遠い距離にある足先から順に血液の停滞が起こり浮腫を生じるという訳です。
筋肉ポンプを使わない長時間の同一体位が長時間の立位であった場合は、重力の影響も加味されるため、浮腫の原因としてはさらによろしくありません。
筋肉量と筋肉疲労
むくみや浮腫の前段階として足の疲れやだるさを感じることがあります。原因が、上述の長時間の立位と長時間の同一体位である場合以外に、趣味やスポーツなどで生じた慢性疲労が原因となる場合もないとは言えません。
以前よりも筋肉を使わない状態が長く続くと、筋肉の質量が減少するため、疲労が蓄積しやすくなります。もともと筋肉の質量が少ない方もいらっしゃいますが、こういった方々よりも筋肉量が減少した状態の方が疲労は蓄積しやすいです。筋肉疲労を自覚しながらにして放置し、筋肉に疲労が蓄積し続けると、筋肉自体の動きに精彩を欠き筋肉ポンプの働きが低下するため、疲労やだるさも感じやすいです。適宜、リンパマッサージを行うなどのセルフケアでも疲労回復は可能なので、習慣として行われることをお勧めします。
特に年齢を重ねていくと、筋肉量の低下に加え、心不全などに代表される年齢に伴う様々な身体的変化が重なるため、足の疲れやだるさの原因が別の疾患による場合も十分に考えられます。高齢ではなくとも経年別に身体的変化は進みますので注意が必要です。
自律神経とストレス
自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経は心拍数を上げたり血管を収縮させる働きを司り、逆に副交感神経は心拍数を下げたり血管を拡張させる働きを司ります。良く例えられるのは車のアクセルが交感神経、ブレーキが副交感神経です。
人は起きて仕事をして、疲れて帰って寝て休み、また仕事に行くというサイクルの中で生きていますし、疲れたら眠くなるのも当然ですから、適度に休めているはずなのですが、ストレスがよくありません。ストレスがかかると血管が収縮する方の交感神経が優位になりますので、血液循環が悪くなり血行不良が生じます。この血行不良は言うまでもなく改善したい課題です。
そこで大切なのがストレッサーの除去なのですが、これが簡単ではありません。ですので、体にブレーキを与えるためにも副交感神経を優位にする必要があります。そこど、ゆっくり深呼吸を繰り返すことです。ストレス場面に直面した際、ぜひ導入しましょう。また、ストレス場面が想定される前段階でも有効です。そして、時には、しっかり遊んでゆっくり過ごしてリラクゼーションしましょう。リンパマッサージですと、しっかりリラクゼーションできるうえ、実際に体にも効果があるためお勧めです。
塩分過多
塩分の摂取が多いと、血管内での濃度変化を中和するために過剰な水分が必要になるため、水分摂取過多により結果として浮腫を生じます。
塩分摂取については別のページでも紹介しております。
過度なダイエット
短期間での急激なダイエットにより必要タンパク質の摂取が減少すると、膠室浸透圧が低下するため浮腫を生じます。
衣類による締め付け
矯正下着などの衣類によって局所的な圧迫が加わると、その下部への血液の流れが障害され循環障害が起こり浮腫を生じます。
終盤はやや簡潔すぎましたが、日常生活における浮腫につきまして、ご理解いただけましたでしょうか?リンパマッサージ資格を取得するのであれば、是非とも身につけておきたい知識であると考えております。また、知識としてのみならず、リンパマッサージで触れる際の感覚にも多少の学びにつながれば幸いです。