便秘とリンパマッサージ

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便秘とは、「体外へ排出されるはずの糞便が快適に排出されない状態」であり、便秘の程度に応じて、排便困難感、腹痛や腹部の膨満感などの症状を伴います。便秘の発症率は個人差が大きく2~30%とされており、男女比では女性が男性のおよそ2倍との報告もあり、年齢比では加齢に伴って増加する傾向にあります。この便秘の程度や分類などによっては、食事や生活習慣の指導、さらには医療機関での画像検査や治療が必要な場合もあります。便秘症には、大腸がん、クローン病、潰瘍性大腸炎のような疾患が原因の場合もありますので、症状が重篤な場合などでは医療機関での診察をお勧めいたします。

 

 

 

 

 

1. 便秘症の原因

 

 便秘の原因には、不規則な食生活、食物繊維や水分不足、ビタミン欠乏、精神的要因、体質や職業上の要因(便意を我慢する必要がある仕事)などが挙げられ、便秘薬の乱用なども要因となります。便秘には、水分不足から糞便が硬便になってしまうことで排出困難な便秘と、腸管の狭窄や蠕動異常などによる器質的な便秘があります。例え2~3日に1回でも排便があって残便感などなければ便秘ではありませんが、排便後に残便感や腹痛などの症状が残れば便秘と言えます。
便秘になると、腸管内の発酵作用などにより有害物質が貯留することで、腹部不快、嘔気や嘔吐、腹痛、腹満感などの症状を随伴する可能性もありますので、そちらの症状にも留意が必要です。

 

 

 

 

 

 2.便秘症の分類

 

通常、便秘と言えば機能性便秘の中でも、ストレスや不規則な食習慣などによる一過性に経過する便秘を指します。一過性の機能性便秘の原因としては、ストレスや旅行、仕事や学業、妊娠や出産などのライフスタイルの環境変化などが挙げられますが、一時的であるケースがほとんどです。
ただし、機能性便秘には、慢性経過をたどる場合もあり、その場合は、弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘、器質性便秘、症候性便秘に分類されます。

 

 

弛緩性便秘

弛緩性便秘とは、大腸の蠕動運動の低下により大腸内での停滞時間が延長し、過剰に水分が吸収されることで硬便となり、便秘症状を引き起こします。女性に多く加齢性変化を伴い、水分や食物繊維、ビタミンなどの摂取不足が誘因となります。

 

 

痙攣性便秘

精神的・身体的なストレスなどが誘因となり、大腸の過緊張により腸の蠕動運動にムラが生じ、便がコロコロになったり便秘と下痢を繰り返したりします。

 

 

直腸性便秘

腸管の蠕動は正常ですが、直腸での排便反射は失調することにより、便が腸管に逆行性に停滞していき便秘を引き起こします。高齢者や寝たきり、職業上の要因(便意を我慢する必要がある仕事)のる方に起こりやすいです。

 

 

器質性便秘

腸管の狭窄や腸管の外部臓器(妊娠時の子宮や腹水など)による圧迫、痔や脱肛などその他の器質的疾患に伴う異常があれば、便秘を引き起こす可能性があります。

 

 

症候性便秘

内分泌疾患、神経系疾患、代謝性疾患などあれば、便秘を引き起こす可能性があります。

 

 

 

 

 

3.慢性便秘症の診断基準

 

慢性便秘症とは、便秘の経過が6か月以上前からであり、最近の3か月において下記の基準6項目のうち2項目以上を満たしていることという指標があります。

 

❐ a: 排便の1/4超の頻度で強くいきむ必要がある。

❐ b: 排便の1/4超の頻度で兎糞状便または硬便である。

❐ c: 排便の1/4超の頻度で残便感を感じる。

❐ d: 排便の1/4超の頻度で直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある。

❐ e: 排便の1/4超の頻度で用手的な排便手技(摘便・会陰部圧迫)が必要である。

❐ f: 自発的な排便回数が週に3回未満である。

 

 

 

 

 

4.便秘の治療

 

 

4-1.便秘症の食事指導 

 

 便秘対策なら、日常生活上の食習慣の改善が大切です。食物繊維や水分不足、ビタミンやミネラルなどをバランスよく摂取することを心掛けましょう。

 

 

 便秘予防なら食物繊維の摂取がおすすめ

 

便秘予防には、食物繊維の摂取が効果的です。食物繊維は、穀物、緑色野菜、豆類、海藻類、キノコ類、イモ類などに多く含まれており、食物繊維の一日の摂取目安は20g前後と言われております。食物繊維には、便秘を解消しコレステロールの吸収を抑え、大腸がんの発生率を低下させるなど、生活習慣病を予防する働きがあることが明らかになっており、5大栄養素に並ぶ6番目の栄養素としても注目されております。食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、水溶性の食物繊維は便を柔らかくし、不溶性の食物繊維は腸管の蠕動運動を刺激する働きがあります。この食物繊維と十分な水分を一緒に摂取することによって、腸管の蠕動運動が活発になります。ただし、食物繊維の過剰摂取は、ビタミンやミネラルの吸収効率を低下させ、逆に便通異常を招く場合もございますので注意が必要です。
便秘の方は、よく消化に優しい食物を摂取されてるケースが多いのですが、消化が良い食物は便となる量が少ないので、腸管の蠕動運動が逆に低下することもあります。しっかりと便の材料となる食物繊維の摂取はこの点でも欠かせません。

 

 

 

 

 

4-2.便秘症の薬物療法

 

 日常生活や食習慣を改善しても便秘にお困りの方の中には、既にお薬を服用されている方も多いようです。薬物療法となりますと、医療機関での処方が必要ですので、ここでとりあげる必要はないのですが、よく処方される便秘薬について少し記載します。
通常、便秘症の薬物療法では、酸化マグネシウムに代表される非刺激性下剤がまず処方されると思います。酸化マグネシウムなら、1回0.3~0.66g、一日2~3回を毎日服用いただき、便秘の程度や随伴症状などによって服用量を調整していきますが、便秘が改善しない場合は、センノシド1回1~4錠、1日1回就寝前などの刺激性下剤を就寝前に緊急用に頓服いただきことが一般的です。

便秘症治療薬には、浣腸や座薬を含め、多様な種類がございますので、乱用することなく、医師の指示通り指示された容量を服薬いただくことで改善に向かうことが多いようです。

 

 

  

 

 

5.便秘とリンパマッサージ

 

ストレス、女性ホルモン、妊娠や出産などのライフスタイルの変化などにより、便秘でお悩みの女性は多いと思います。リンパマッサージには、排泄を促す機能がありますが、排出経路としては尿・糞便・呼吸・不感蒸泄などがあげられ、体内に過剰に蓄積した老廃物は、おもに糞便として体外へ排出されます。そのため、リンパマッサージで排泄を促すことで、便秘が解消に向かいます。
また、リンパマッサージは、副交換神経の働きを高めリラックス効果が得られます。リラックスした状態では、腸管の蠕動運動が促進されますので、さらに効果的という訳です。便秘症状が和らぐと、便秘により随伴していた可能性のある嘔気や嘔吐、倦怠感などの症状も改善に向かいますので、よりリンパマッサージによる効果を実感いただけることと思います。

 

 

 

 

 

 

便秘症は、日常的に良く耳にする症状ではありますが、中には器質性便秘や症候性便秘などの疾患が影響しているケースもございますので留意が必要です。ただし、急性の一過性の便秘においては、特にリンパマッサージが有効と言えます。あえてここでは解説致しませんが、リンパと腸管には深い関係性があるのです。 ただし、便秘の原因がストレスや食習慣にあることが疑われれば、リンパマッサージに加え食習慣へのアドバイスによる日常生活の改善が必要となります。